新人さんと話すときにPTが本当に意識すべき「たった一つのこと」【指導が楽になる】
新人さんに説明したはずなのに、「あれ、全然伝わっていなかった」という経験、ありませんか?
「はい、わかりました」と言っていたのに、次の日には全く違うことをしていた。
何回説明しても同じミスをする。
「何を考えているの?」と思いたくなるけど、そう言えない。
私(ぽん)も、後輩や学生指導に関わる中で、こういった場面に何度も直面してきました。
「自分の説明が下手なのかな」「どうすれば伝わるんだろう」と悩んだことは一度や二度じゃありません。
でも、ある時から意識することを一つだけ変えたことで、新人さんとのコミュニケーションがかなりスムーズになりました。
この記事では、その「たった一つのこと」を軸に、新人指導でありがちなミスコミュニケーションの原因と、具体的な実践方法をお伝えします。
新人指導で陥りがちなミスコミュニケーション
まず、なぜ「伝えたはずなのに伝わらない」が起きるのかを考えてみます。
指導側の「思い込み」が原因になっていることが多い
ベテランになるほど、「これは当然わかるだろう」という前提が増えていきます。
- 「この用語は知っているはず」
- 「前に一度説明したから大丈夫」
- 「ちゃんと聞いていれば理解できる内容だ」
でも、新人さんは私たちが「当然」と思っていることを、まだ知らないことがほとんどです。
この「前提のズレ」が、伝わらない最大の原因の一つです。
「情報量が多すぎる」問題
PTの指導は、つい「あれもこれも伝えなければ」となりがちです。
でも、一度に多くの情報を渡されても、新人さんは処理しきれません。
特に、不安が大きい状態では脳の処理能力が下がり、聞いているようでほとんど頭に入っていないことがあります。
これは「やる気がない」ではなく、認知的な負荷のオーバーフローです。
「はい」の意味が違う
新人さんの「はい、わかりました」には、いくつかの意味が混在しています。
- 本当に理解した「はい」
- とりあえず返事をした「はい」
- 「わからない」と言えなくて「はい」
- 聞こえたことへの相槌としての「はい」
特に新人さんは、先輩に「わからない」と言うことへのハードルが高いです。
その結果、理解できていなくても「はい」と言ってしまいます。
「伝えた」と「伝わった」はまったく別物
指導する側として、ここは本当に大事なポイントです。
「伝えた」というのは、あなたが情報を出したという事実です。
「伝わった」というのは、相手が理解したという事実です。
この二つは別物で、「伝えた」だけでは「伝わった」にはなりません。
コミュニケーションの責任は、話した側にあります。
「なんで理解できないの?」ではなく、「どうすれば理解してもらえるか」を考えるのが、指導者としての姿勢です。
そして、「伝わった」かどうかを確認する責任も、指導する側にあります。
新人さんの視点に立つための「たった一つのこと」
ここが、この記事で最もお伝えしたいポイントです。
それは、
「相手の不安を先に受け止めてから話す」
ということです。
新人さんは常に不安の中にいます。
- 「間違えたらどうしよう」
- 「こんなことも知らないと思われたらどうしよう」
- 「先輩の言っていることが理解できていない」
- 「また怒られるかも」
この不安が心に残っている状態では、どんなに丁寧に説明しても入っていきません。
まず不安を受け止めることで、新人さんの「聞ける状態」を作ることが重要です。
具体的にはどうすればいいか
難しいことはありません。
指導を始める前に、一言添えるだけです。
- 「最初はわからなくて当然だから、気軽に聞いてね」
- 「今日初めてやることだから、わからないのは当たり前だよ」
- 「わからないことを聞いてくれた方が、私も助かるから」
こういった一言を先に言っておくだけで、新人さんの「わからないと言えない緊張感」がかなり緩みます。
そして、説明した後に必ず「確認」をセットにしてください。
NG例とOK例の比較:実際の会話で見てみよう
具体的なシーンで考えてみます。
「明日の患者さんのリハビリ計画を自分で考えてきて」と伝えるとき。
NG例
先輩:「明日の○○さんのプログラム、考えてきてください。起立練習と歩行練習を中心に。」
新人:「はい、わかりました。」
(翌日、新人は起立練習しか準備していなかった)
先輩(心の中):「なんで歩行練習も入れてこないの……」
OK例
先輩:「明日の○○さんのプログラム、自分で考えてみてほしいんだけど、初めてだから難しいと思う。まず起立練習と歩行練習を中心に考えてみてね。わからないことがあったら何でも聞いてね。」
新人:「はい。起立練習と歩行練習の2つを組み合わせればいいですか?」
先輩:「そう!あとは時間配分も考えてみてね。イメージできそう?」
新人:「はい、やってみます。一応考えたら確認してもいいですか?」
OK例では、新人さんが「わからない部分を聞ける」状態になっています。
そして先輩も「伝わったかどうか」を確認する流れが自然に生まれています。
違いは、最初の一言で「わからなくていい場所だよ」という安心感を渡せているかどうかです。
指導が楽になった体験談
私が意識を変えたのは、担当した学生さんとのやり取りがきっかけでした。
その学生さんは、返事だけは良くて実際には何もできていない、というパターンが続いていました。
「なんでわからないのに聞かないの?」と正直思っていました。
ある日、思い切って聞いてみました。
「わからないとき、なんで聞かないの?」
すると、「質問すると怒られそうで怖い」と言ったんです。
私は「怒らないのに…」と思いましたが、よく考えると、自分は「怒る雰囲気じゃない」と思っていても、相手にはそう見えていなかったんです。
それから、指導の最初に「わからなくて当然だから、どんどん聞いてね」と必ず言うようにしました。
すると、質問が増えて、こちらも「どこで詰まっているか」がわかるようになって、ずっと指導しやすくなりました。
「指導が楽になった」というより、「一緒に考える関係になれた」という感覚が近いです。
実際に使える「確認の一言」
新人さんと話した後、こんな一言を添えるだけで変わります。
- 「今の話、どこかわかりにくかったところある?」
- 「ちょっと自分の言葉で言ってみてもらえる?」
- 「明日やってみてどうだったか、また教えて」
- 「一番難しそうと思ったのはどこだった?」
- 「もし私だったらこうするんだけど、どう思う?」
これは「テスト」ではなく「確認」です。
相手が理解できているかを確かめることで、次の話のレベルを合わせることができます。
最初は少し手間に感じるかもしれません。
でも「なんで伝わらないんだろう…」と悩む時間を考えると、ずっと効率的です。
先輩も完璧ではなくていい
新人指導について書いてきましたが、最後にひとつ。
「うまく指導できていない」と感じているPTは、それだけで十分真剣に向き合っています。
悩んでいないベテランより、悩んでいる先輩の方が、新人さんにとって話しかけやすかったりします。
私自身も、指導に正解はないと思っています。
「うまくいかなかったな」という経験を積み重ねながら、少しずつコミュニケーションの精度が上がっていく感じです。
「相手の不安を先に受け止める」という一つの意識だけでも、今日から変えてみてください。
きっと、新人さんとのやりとりが少し変わるはずです。
新人さんのタイプ別・対応のヒント
新人さんと一言でいっても、タイプはさまざまです。
タイプによって、「不安を受け止める」アプローチも少し変えると効果的です。
おとなしくて自分から質問しないタイプ
このタイプは「質問することへのハードル」が非常に高いです。
こちらから声をかけることが大切です。
- 「今日困ったことない?」と定期的に声をかける
- ふたりきりになる場面を意識的に作る(大勢の前では聞けないことも多い)
- 「私もこれ最初は全然わからなかった」と自己開示する
返事だけは良くて行動が伴わないタイプ
「わかった」と言うけど次の日にできていない、というパターンは「わかった気になっている」ことが多いです。
- 「自分の言葉で説明してみて」と確認する
- やってみせてから、やらせてみる(見本を先に見せる)
- 「難しいと思うから一緒に最初だけやってみよう」と寄り添う
積極的で自信がありすぎるタイプ
こちらは逆に「わかっていないのに確認しない」というリスクがあります。
自信を持ちすぎて突き進んだ結果、気づいたら大きなミスになっていたということも。
- 「念のため確認するね」と自然な流れで確認する習慣をつける
- 「これはどうしてそう判断したの?」と理由を聞いて思考プロセスを確認する
どのタイプでも共通しているのは、「安心できる環境を作ること」が基本になるということです。
まとめ
新人指導でいちばん大切なのは、「相手が理解できている状態かどうかを確かめること」です。
そのためにまず必要なのが、「相手の不安を先に受け止める」という一言です。
- 「わからなくて当然」という安心感を先に渡す
- 説明した後に「確認の一言」をセットにする
- 「伝えた」ではなく「伝わった」かどうかを確認する習慣をつける
この3つを意識するだけで、新人さんとのコミュニケーションはかなり楽になります。
完璧な指導者でなくていい。
「一緒に考える先輩」を目指すだけで、新人さんとの関係は変わっていきます。
新人さんとの関係がうまくいくと、指導する側も楽しくなります。
「教える」から「一緒に育つ」という感覚に変わったとき、PTとしての成長にもつながっていきます。
新人さんへの関わり方は、そのまま自分自身の「伝える力」を鍛えることにもつながります。
指導を通じて成長するのは新人さんだけではないんですよね。

