評価が苦手なPTが最初に整理すべき考え方|臨床がブレなくなる思考の軸
「評価に入ると、何から手をつければいいかわからなくなる」
「検査はひととおりやったのに、結果がバラバラでうまく整理できない」
こんな気持ち、覚えがありませんか。
私がそうでした。新人のころ、評価の時間になるたびに緊張して、ROM測って、MMTやって、感覚チェックして……一通りこなしても「で、何がわかったんだろう」ってなることが多かったです。
評価が苦手な若手PTって、決して少なくないと思います。でも「苦手」の中身をちゃんと整理してみると、実は知識が足りないわけじゃないことが多い。むしろ、評価に向かう”考え方の順番”がずれているだけのことがほとんどです。
この記事では、評価が苦手な若手PTが最初に整理すべき「思考の軸」について、私自身の経験も交えながら書いていきます。
「評価が苦手」という状態の正体
まず最初に確認しておきたいのですが、「評価が苦手」という言葉、実は中身がいろいろあります。
・何から始めればいいかわからない
・情報は集まるけど、それが治療に活かせない
・評価と介入がバラバラで、つながっていない気がする
・先輩に「評価がブレてる」と言われる
どれも「評価が苦手」という言葉でひとくくりにされますが、それぞれ困っている場所が違います。
ただ、これらに共通している根っこの問題が一つあります。それは、「評価で何を決めたいのか」が最初に定まっていないこと。
評価は情報収集のための作業ではなく、「次に何をするかを決めるための作業」です。この視点がないまま評価に入ると、どれだけ検査を丁寧にやっても、結果が散らばったままで終わってしまいます。
新人のころの私はまさにそうで、「ひととおりやれば何かわかるはず」という気持ちで評価していました。でも実際には、情報が多ければ多いほど、どれを使えばいいかわからなくなっていた。
「評価が苦手」というのは、評価の技術の問題というよりも、評価の目的が曖昧なまま動いている状態のことが多いんです。
臨床でブレる本当の原因は”情報収集の順番”だった
評価でブレる原因を「知識不足」だと思っている人が多いですが、私はそれが原因になることは思ったより少ないと感じています。
それよりも大きな問題は、情報収集の順番が逆になっていることです。
多くの若手PTがやりがちなのは、こういう流れです。
「患者さんと会う → とりあえずROM測る → MMTやる → 感覚確認 → 動作見る → …で、どうしよう?」
これ、情報をまず集めてから”考える”という順番になっています。でも本来は逆なんです。
「この人は何に困っているのか」→「なぜそれが困難なのか(仮説)」→「その仮説を確かめるために何を見るか」
この順番で動けると、評価の意味が全然変わります。
なぜ「情報収集が先」になってしまうかというと、「何かを見落としたら困る」「全部チェックしないと不安」という気持ちが強いからだと思います。それは真面目な証拠なんですが、結果として評価が散らかって、余計にブレてしまう。
評価がうまい先輩セラピストを見ていると、むしろ評価の量は少なかったりします。でも少ない情報でも治療に直結できるのは、最初から「何を明らかにしたいか」が決まっているからです。
臨床でブレないためには、「見てから考える」ではなく「考えてから見る」順番に切り替えることが第一歩です。
最初に整理すべき思考の軸3つ
では具体的に、どういう思考の軸を持てばいいのか。私が意識するようになって、評価がずっと楽になった3つの軸を紹介します。
軸①:「この人が一番困っていること」は何か
これがすべての出発点です。歩行なのか、立ち上がりなのか、トイレ動作なのか、疼痛なのか。
「主訴を聞く」というのは学校でも習いますが、実際の臨床では主訴が漠然としていることが多いです。「歩けるようになりたい」と言われても、「どこまで歩きたいのか」「何のために歩きたいのか」まで掘り下げないと、評価の方向は定まりません。
私が意識しているのは、「患者さんの困っていることを、一文で言えるか」というチェックです。「○○さんは、自宅のトイレまで一人で歩いて行きたいが、今は歩行中の右立脚が不安定で転倒リスクが高い」みたいに言えると、評価の向かう先がはっきりします。
逆に言えないうちは、評価に入るのが少し早いかもしれません。まずは「この人が一番何に困っているか」を患者さんやカルテから拾うことを最優先にする。これだけで、評価のブレがかなり減ります。
軸②:「なぜできないのか」の仮説を3つ以内に絞る
困っている動作が決まったら、次は「なぜそれができないのか」を考えます。ポイントは、最初から絞ることです。
たとえば「右立脚が不安定」という問題に対して、考えられる原因はたくさんあります。股関節外転筋の筋力低下、足関節の可動域制限、体幹の側屈制御の問題、視覚・前庭情報の処理、患側への荷重意識の低下……。
全部を同時に調べようとすると、評価が散らかります。だから最初に「これが一番怪しい」「次にこれ」と、仮説を2〜3個に絞る。
仮説が外れても大丈夫です。「仮説①を確かめたら違った、では次は仮説②を見てみよう」という流れが、評価の精度を高めていきます。最初から正解を出そうとしなくていい。仮説→確認→修正、という繰り返しが評価の本質です。
仮説を立てることで、「何のためにこの評価をしているか」が自分でわかる状態になります。それだけで、評価の質は大きく変わります。
軸③:「評価と治療がつながっているか」を確認する
評価が終わったあと、私が必ずやるのが「評価→問題→介入」のストーリーを一本の線にする作業です。
例えば、「右股関節外転MMT3 → 右立脚中の骨盤右傾斜 → 歩行の非対称化 → 転倒リスク上昇」という因果関係が作れれば、介入の理由が明確になります。「だから今日はここに絞る」という判断ができる。
これが言語化できないうちは、治療がなんとなくになりやすい。逆にできるようになると、「今日は右股関節外転筋の段階的な負荷訓練と、立脚中の骨盤側方制御への声かけをする」という具合に、プログラムが組みやすくなります。
先輩に「なぜその治療をしているの?」と聞かれたときに、評価の結果を根拠にして答えられる状態にする。これが軸③の目標です。
ぽんが評価に自信を持てるようになったきっかけ
正直に言うと、私が評価に少し自信を持てるようになったのは3〜4年目のことです。それまではずっと「なんかブレてる感じ」がしていました。
転機になったのは、ある先輩に「ぽん、評価前に”今日は何を明らかにしたいか”一言で言ってみて」と言われたことです。
最初は答えられませんでした。「ひととおり確認します」みたいなことしか言えなかった。でも先輩は「それじゃ評価じゃなくてチェックリストになっちゃうよ」と教えてくれました。
そこから少しずつ、評価に入る前に「今日はこの人の右膝の屈曲制限が本当に原因なのか確かめる」とか「立ち上がりで体幹前傾が出にくい理由を絞り込む」という目標を決めてから動くようにしました。
すると不思議なことに、評価の量は減ったのに「わかった感」が増えました。評価後に先輩に報告するときも、「○○を調べたら××という仮説が支持されました」と言えるようになってきた。
知識が増えたから評価が改善したというより、評価の目的を先に決める習慣がついたからだと思っています。
評価が苦手な方に一番伝えたいのは、「まず知識を増やそう」ではなく、「評価に入る前に一言で目的を言えるようにしよう」ということです。それだけで評価の質はかなり変わります。
実践:次の患者さんから使える評価の整理法
理屈はわかった、でも実際どうやって?という方のために、明日からすぐ使えるステップを書いておきます。
STEP1:評価前に「今日の問い」を決める
評価に入る前に、30秒だけ立ち止まります。そして頭の中(または紙に)こう書く。
「今日は、○○さんの(困っている動作)が(なぜできないか)を確かめる」
たとえば「今日は、田中さんの歩行中の右立脚不安定が、股関節外転筋力の問題なのか体幹制御の問題なのかを絞り込む」のように。
これを言語化するだけで、評価の方向が決まります。
STEP2:仮説を2〜3個だけ立てる
「今日の問い」に対して、考えられる原因を2〜3個あげます。この段階では正解を出す必要はありません。「たぶんこれかな」「もしかしてこっちかも」くらいの感じで大丈夫です。
仮説があると、「この評価はどの仮説を確かめるためにやっているか」が自分でわかる状態になります。
STEP3:仮説に対応する評価だけ選ぶ
仮説①が「股関節外転筋力低下」なら、それを確かめる評価(MMT、徒手筋力計、立脚中の骨盤傾斜観察など)に絞る。仮説②が「体幹制御不足」なら、体幹関連の評価を見る。
全部の検査をやらなくていいです。仮説に関係ない評価は後回しにして構いません。
STEP4:評価後に「ストーリー」を一本つなぐ
評価が終わったら、「問題→原因→介入」を一文でつなぎます。
「右股関節外転MMT3(原因)→ 立脚中の骨盤右傾斜(問題)→ 歩行非対称(結果)→ 今日は股関節外転筋の強化と立脚中フィードバック(介入)」
これが言えると、自分でも「今日の評価は意味があった」と感じやすくなります。そして振り返りにも使えます。
STEP5:「予測と結果のズレ」をメモしておく
仮説と実際の評価結果が違ったとき、「なぜズレたか」を一言メモしておくと、臨床推論の精度が上がっていきます。
「股関節外転筋力は思ったより保たれていた。体幹側屈が本命かも」という気づきが積み重なると、だんだんと「最初の仮説が当たりやすく」なってきます。これが経験値の正体だと思っています。
まとめ
評価が苦手な若手PTに一番伝えたいことをまとめます。
・「評価が苦手」の本当の原因は知識不足ではなく、「評価で何を決めたいか」が曖昧なことが多い
・情報をまず集めるのではなく、「仮説を先に立ててから確かめる」順番に変えるだけで評価は変わる
・最初に整理すべき軸は「困っていること」「なぜできないかの仮説」「評価と治療のつながり」の3つ
・評価前に「今日は何を明らかにしたいか」を一言で言えるようにする習慣が、臨床の安定につながる
評価は「完璧にやるもの」ではなく、「今日の問いに答えるもの」です。
一回の評価で全部わかろうとしなくていい。小さな仮説を繰り返し確かめていく中で、だんだんとその患者さんのことがわかってくる。そのプロセス自体が、臨床の醍醐味だと私は思っています。
焦らず、一歩ずつ。評価が苦手な自分を責めなくていいです。「今日の問いを一つ決める」、それだけから始めてみてください。

